このページの要点
- 特定継続的役務提供の一の項(エステティック)は、体型を整え体重を減ずる施術を、施術者の資格で区切らずに定めている。目的は書面の題名でなく、広告や説明から判断される(特商法41条2項、令別表第四)。
- コース名と役務の内容は、種類・方法・回数の総計まで書面で特定する(規則93条)。「治療鍼」のような名称は、広告の制限(あはき法7条・柔整法24条)にも注意する。
- 「個人差があります」だけでは足りない。効果を保証しないこと、医療契約でないことを目的の条に書き、勧誘の説明も揃える(特商法44条1項1号)。
- 留意事項通知は、紹介料その他の経済上の利益を提供して患者の紹介を受けた施術を、療養費の支給対象外とする(別添1・別添2の通則3)。患者紹介の契約の報酬はこの定めと照らして決める。
鍼灸院・接骨院(柔道整復の施術所)・訪問マッサージが取り交わす書面は、大きく三つに分かれます。一つ目は、健康保険の療養費を扱う施術の書面とルール(受領委任の取扱規程に従う部分)。二つ目は、美容鍼・姿勢矯正・食事指導などを組み合わせた自費の継続コースの契約書面。三つ目は、患者の紹介や施術の導入を外部の事業者に頼む業務委託契約です。この三つは、同じ施術所の中で同時に動いていても、根拠となる決まりも、書面に書くことも別々です。
このページは、その三つのうち自費の継続コースと、患者紹介・導入支援の契約を中心に、療養費のルールとの接点を整理します。事務所が確認した書面の論点は、鍼灸院が既存の患者に新しく提案する高額な体質改善コースの契約書面・概要書面(依頼者の原案のレビュー)と、保険を使う訪問鍼灸の施術所へ患者を紹介し導入を支援する業務委託契約(依頼者の原案のレビューと再レビュー)です。診断・施術の内容、療養費の支給の可否、個別の広告の適否は、事務所が判断するものではありません。条文と、所管官庁が公表している資料で確認できる範囲だけを書きます。
鍼灸院・接骨院で動く三つの書面
- 保険の施術療養費の受領委任。取扱規程・算定基準に従う。患者の署名を受けた申請書で請求する
- 自費の継続コース美容鍼・体質改善・ダイエット等。概要書面・契約書面(特定継続的役務提供に当たる場合)と利用規約
- 外部事業者との契約患者の紹介・導入支援の業務委託。報酬と患者情報の扱いが論点
同じ患者が、保険の施術と自費のコースの両方を受けることもあります。その場合は、書面と記録を混ぜないことが出発点です。
自費の高額コースは、特定継続的役務提供に当たるかを先に決める
特定継続的役務提供とは、特定商取引法41条が定める契約類型で、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの七つの役務が政令で指定されています(同条2項、同法施行令25条・別表第四)。指定された役務について、役務ごとに定められた期間を超えて提供し、5万円を超える金銭を支払う契約が対象です(法41条1項1号、令24条)。エステティックと美容医療の期間は1か月で、「1か月を超え、5万円を超える」契約がこれに当たります。
鍼灸院のコースで問題になるのは、一の項のエステティックです。令別表第四の一の項は、「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」と定めています。この文言は、施術する人の資格では区切っていません。美容鍼で肌を整える、姿勢矯正で体型を整える、体重を減らすプログラムをうたう、といった目的で継続して施術を提供するなら、鍼灸師が行う施術であっても、文言上は一の項に当たり得ます。反対に、痛みや不調の緩和を目的とする施術が、体型や体重の話を含まない形で提供されているなら、別の整理になります。なお、二の項は医学的処置・手術その他の治療としての美容医療の類型で、五つの役務と方法が限定されています(美容医療の契約書と特定継続的役務提供)。
もう一つ、法の定義があります。特定継続的役務は、身体の美化などの目的を実現させることをもって誘引が行われ、かつ、役務の性質上、その目的が実現するかどうかが確実でないものです(法41条2項1号・2号)。つまり、契約書面の題名や中身だけでなく、広告・ホームページ・カウンセリングの説明・SNSでの訴求が、何を目的として人を誘っているかが判断の材料になります。
事務所の書類での扱い 体質改善ダイエット鍼灸プランの概要書面のレビュー
書面の題名と、サービスの位置づけ
消費者は書面の題名を見て「法律上整理された契約」と受け取ります。該当性の検討が不十分なまま、特定継続的役務提供を前提とした書面だけが先行すると、後で返金の請求を受けたときに、どの法律の枠で精算するのかを説明できません
この整理は、書面を整える前の順番の問題です。該当すると考えて運用するなら、概要書面・契約書面・クーリング・オフ・中途解約・前払金の扱いまで、一式を法定の形に揃えます。該当しないと考えて運用するなら、法定の書面を使わない代わりに、消費者契約法(平均的な損害を超えるキャンセル料の無効など)と、広告・勧誘の規制に沿った書き方をします。どちらの場合でも、両方の枠をつぎはぎにした書面は避けます。「特定継続的役務提供に当たる契約として扱う」と決めたなら、前払金が5万円を超えるコースでは、業務と財産の状況を記載した書類の備え置きと閲覧(法45条、令27条)、概要書面の前受金の保全措置の有無の記載(規則92条1項1号ヌ)も、同じ枠の中の義務になります。
コースの名称と役務の内容を、書面の上で特定する
契約書面に書く役務の内容は、法令が項目を指定しています。役務の種類、役務提供の形態または方法、役務を提供する時間数・回数その他の数量の総計、そして施術を行う者の資格・能力等について特約があるときはその内容です(法42条2項1号、規則93条1項)。概要書面にも、提供される役務の内容、金銭の概算額、支払の時期と方法、提供期間などを書きます(規則92条1項1号)。
レビューした書面は、役務の内容を「DNA検査、治療鍼、美姿勢矯正、美容鍼、食事指導、生活習慣改善指導、健康管理サポート等」と並べるだけで、コースごとの中身が分かりませんでした。複数のコースを比べても、利用者に分かるのは金額の違いだけで、「最も高額なコースと次のコースで、何が違うのか」「治療鍼とはどのような施術か」「美容鍼や姿勢矯正は何回か」「食事指導は初回だけか継続か」「健康管理サポートは対面か、LINEか、電話か」が書かれていません。レビューは、各コースの施術の内容・回数・期間・方法・予約できる回数・オンライン対応の有無・未利用分の扱いを、書面の上で特定するよう求めました。
名称には、もう一つの注意があります。「治療鍼」のように、医療を思わせる言葉をコースの名前に使うときは、契約書面で内容を特定するだけでなく、その名称をホームページやSNSで使うことが広告の制限に触れないかも確認します。あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうの施術所の広告は、あはき法7条が、施術者である旨と氏名・住所、業務の種類、施術所の名称・電話番号・所在の場所、施術日・施術時間、厚生労働大臣が指定する事項以外は広告してはならないと定めています(同条1項)。1号から3号の事項を広告する場合でも、施術者の技能、施術方法または経歴に及んではならないとされています(同条2項)。柔道整復の施術所には、同じ構造の規定が柔道整復師法24条にあります。契約書面の名称がそのまま広告に載れば、この制限が問題になり得ます。
医療機関の広告との違いも押さえておきます。医療法の広告規制(6条の5)は病院・診療所の広告に関するもので、施術所の広告は、あはき法7条・柔道整復師法24条の制限と、景品表示法や特定商取引法の表示規制の側で考えます。医療広告の一般的な整理は医療広告ガイドラインと契約書で紹介しています。
| 書くこと | 根拠 | コース契約での具体例 |
|---|---|---|
| 役務の種類・形態または方法・回数その他の数量の総計 | 法42条2項1号、規則93条1項1号〜3号 | 美容鍼◯回、姿勢矯正◯回、食事指導◯回、対面かオンラインか、予約の上限 |
| 役務の対価その他の金銭の明細と合計 | 規則94条1項の表一 | 検査・施術・継続サポートなど費目ごとの金額と総額 |
| 提供期間、支払の時期と方法 | 法42条2項3号・4号 | コースの有効期間、分割払いの可否、決済の取消・返金の方法 |
| クーリング・オフ(8日)、中途解約の上限、提供済み役務の精算方法 | 法48条・49条、規則94条1項の表二・三 | 精算に使う単価表を別紙にして書面に組み込む |
| 契約を担当した者の氏名、前払金の保全措置の有無 | 規則93条2項2号・6号 | 担当者名の記入欄、前受金を預かる場合の記載 |
| 書面の内容を十分に読むべき旨(赤枠・赤字)、8ポイント以上の文字 | 規則94条3項・4項・5項 | クーリング・オフの事項も赤枠に入れる |
効果の保証をしないことを、契約の目的の条に置く
「体質改善ダイエット」のように、結果を想像させる名前で売られるコースでは、利用者の多くが痩身や減量の効果を期待して申し込みます。レビューした契約書面の目的の条は「お客様の体質改善・健康増進を目的としたサービスを提供し、お客様はこれに対する対価を支払う」と一文だけでした。免責の欄も「効果には個人差があり、成果を保証するものではありません」にとどまっていました。依頼者の説明は、ダイエットはあくまで結果で、目的は体質改善と動きやすい身体づくりの土台をつくることだ、というものでした。レビューは、この考え方を目的の条に書くよう勧めています。
特定継続的役務提供に当たる場合、役務の内容や効果について事実と異なることを告げる行為は禁止されています(法44条1項1号)。故意に事実を告げないことも禁止です(同条2項)。広告で、効果について著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良だと誤認させる表示をすることも許されません(法43条)。消費者契約法も、重要事項について事実と異なることを告げて契約させた場合の取消し(4条1項1号)と、利益になる事実だけを告げて不利益な事実を故意または重大な過失で告げなかった場合の取消し(同条2項)を定めています。ですから、「個人差があります」という抽象的な免責の文だけに頼るのではなく、勧誘のときの言い方・資料・ホームページを、書面と揃える必要があります。
- 当院は、鍼灸施術、姿勢の調整、食事・生活習慣に関する指導を組み合わせ、利用者の身体の状態を整え、動きやすい身体づくりの土台をつくることを支援する(目的)。
- 本プランは、体重の減少、目標体重への到達、体型の変化、体質の改善、痛みの改善、疾病の治癒その他特定の結果を保証するものではない。
- 本プランは、疾病の治療または改善を目的とする医療契約ではない。
- 結果は、利用者の食事、睡眠、運動、生活習慣、体質、年齢、既往歴、服薬の状況等により異なる。利用者は、自らの取組みが必要であることを理解する。
「保証しない」と書いても、勧誘の場面で「必ず痩せる」と話せば不実告知になり得ます。この条は、勧誘の資料・ホームページの表現と揃えて初めて意味を持ちます。
契約書面のレビューでは、健康状態の事前申告(妊娠、持病、通院歴、服薬、血液疾患、感染症、皮膚疾患、ペースメーカー、抗凝固薬、過去の施術のトラブル)、虚偽申告の扱い、施術の中止・延期の条項、施術に伴う反応(眠気、倦怠感、内出血、赤み、痛み、めまいなど)の具体的な記載も求めています。この部分の書き方は医療行為との線引きで詳しく紹介しました。
キャンセル・有効期間・支払の書き方:精算の前提を文章にする
特定継続的役務提供に当たるコースでは、クーリング・オフは契約書面を受け取った日から8日以内です(法48条1項)。その後も、将来に向かって、いつでも中途解約できます(法49条1項)。解約のときに請求できる損害の上限は、一の項のエステティックの場合、施術の提供開始前なら2万円、開始後なら「提供済みの役務の対価」に、「2万円」と「契約残額の10%」のいずれか低い額を加えた額までです(法49条2項、令30条・31条、別表第四の一の項)。この上限を超える違約金の定めは、その部分が効力を持ちません。精算に使う単価表を契約書面の別紙として組み込む方法や、DNA検査を組み込んだコースで「使用」の時点を決める方法は、キャンセル料・返金の考え方で紹介しました。
それ以外にも、レビューは契約書面の次の点を指摘しています。
- 「無断キャンセルは、当該回数分のサービスを消化したものとみなす場合があります」とあるが、無断キャンセルとは何か、何時間前・何日前までの連絡なら変更できるか、当日のキャンセルや遅刻の扱い、体調不良や災害のとき、院の都合で日程を変えるときの扱いが書かれていない。
- 有効期間を過ぎた未消化の施術が、失効するのか、延長できるのか、院の都合で予約が取れなかったときはどうするのかが書かれていない。長期のコースほど、通院の頻度が落ちたり予約が取りにくくなったりする。
- 支払方法の欄に、現金・カード・振込の選択はあるが、支払の時期、分割払いの可否、カード決済後の取消・返金の方法、振込手数料の負担、支払が遅れたときの扱いがない。
- クーリング・オフの欄が「詳細は交付済みの概要書面に準じる」となっている。契約書面自体にも、損害賠償・違約金・提供済み部分の対価を請求しないこと、受け取った金銭を速やかに全額返すこと、関連商品も解除できることを書く(規則94条1項の表二)。決済の取消しや返金の方法は、支払の時期・方法の記載(法42条2項3号)と合わせて書く。
分割払いについては、利用者が信販会社の個別クレジット(個別信用購入あっせん)を使う場合、役務の提供を受ける者は、施術所に対して生じている事由(施術が提供されない、契約が解除された、など)を支払の請求への抗弁として、信販会社に主張できます(割賦販売法35条の3の19第1項)。この抗弁の接続の仕組みは、概要書面・契約書面にも記載事項として定められています(規則92条1項1号リ、93条2項5号)。ただし、支払総額が政令で定める金額に満たない場合は適用されません(割賦販売法35条の3の19第4項、同法施行令26条。4万円)。自院が分割払いを受ける形(2か月以上・3回以上)は、割賦販売法2条1項では「指定役務」に限られるため、自院の分割払いを設ける前に、その役務が指定役務に当たるかを別に確認します。
療養費の受領委任と、自費の施術の線引き
保険(療養費)の施術は、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧については、厚生労働省保険局長通知(平成30年6月12日保発0612第2号)の別添1「受領委任の取扱規程」に従って行います。患者から一部負担金を受け取り、残りを施術所が保険者等に請求する形で、施術管理者が承諾を受けて取り扱います。柔道整復の施術所の受領委任は、これとは別の通知と取扱規程で定められているため、条番号も内容も別に確認します。自費のコースと同じ施術所で行うときは、規程が定める次の点を、自費の書面の設計にも反映させます。
保険の施術と自費のコースの対比
観点
保険の施術(受領委任)
自費のコース
患者が払う額
算定基準による費用のうち、一部負担金に相当する額。減免も超過した徴収もしない(規程19)
施術所が定める料金。総額、税込・税別、費目の内訳を書面に明示
請求・書面
施術管理者が申請書を作成し、患者の署名等を受けて保険者等に請求(規程24)。一部負担金を受けるときは、領収証と施術の内容のわかる明細書を、正当な理由がない限り無償で交付(規程20)
概要書面・契約書面(特定継続的役務提供に当たる場合)、利用規約、領収の記録
記録
受領委任に係る施術録を、その他の施術録と区別して整理し、完了から5年間保存(規程21)
コースの契約書面、施術の記録、健康状態の申告書。個人情報として管理
やめるとき
患者の通院の中止。制度の枠での取扱い
クーリング・オフ・中途解約(該当する場合)。それ以外は消費者契約法の平均的な損害の範囲
説明
療養費の支給対象等と、請求上の注意事項を患者に説明(規程23(1))
保険の対象外であること、結果を保証しないこと、中途解約の精算方法を説明
規程の条番号は、はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧に関する上記通知の別添1の番号で、令和8年6月5日の一部改正(同年7月1日の施術分から適用)を反映した版によります。通知は改正が重ねられているため、実際の運用では厚生労働省が公表している最新の版を確認します。
「患者の紹介」に関する定めもあります。厚生労働省の留意事項通知(平成16年10月1日保医発第1001002号。はり・きゅうは別添1、あん摩マッサージ指圧は別添2。いずれも通則の3)は、施術所が、集合住宅・施設・請求代行の事業者もしくはその従事者、医療機関、医師またはその関係者等に対して金品(いわゆる紹介料その他の経済上の利益)を提供し、患者の紹介を受け、その結果なされた施術は、療養費支給の対象外とすると定めています。療養費の請求に必要な同意書または診断書の交付を受けるために金品等を提供した場合も同じです。なお、同じ趣旨の記載は、以前は受領委任の取扱規程の16にも置かれていましたが、令和8年6月5日の改正(同年7月1日の施術分から適用)で規程の本文からは外れています。この分野の通知は改正が続いているため、契約を結ぶ時点の最新の通知と、地方厚生局が公表している取扱いを確認します。保険と自費の両方を扱う施術所が、外部の事業者と患者紹介の契約を結ぶときは、この定めが契約の組み立てに直接関わります。
訪問鍼灸への患者紹介・導入支援の契約
保険(療養費)を使う訪問鍼灸の施術所に、患者を紹介し、施術の導入を支援する事業者は、施術所と業務委託契約を結びます。事務所がレビューした契約書(依頼者の原案)は、紹介する事業者を甲、施術所を乙とし、甲が患者を紹介して導入を支援し、乙が甲に「業務支援費」を払う構成でした。レビューが指摘した点は次のとおりです。
事務所の書類での扱い 患者紹介・導入支援の業務委託契約(甲=紹介する事業者、乙=施術所)
紹介の対象となる「患者」
対象が曖昧だと、紹介行為の範囲が広がり、後で何を成果と数えるかでも争いになります。同意書の取得は、療養費の請求の前提でもあります
業務支援費(報酬)の定め方
報酬が決まっていない契約は、支払義務の存在そのものを争われやすい条項です。ただし、算定基準の置き方は、次に述べる留意事項通知の紹介料に関する定めとの関係を確かめて決めます
施術・請求への関与と責任
紹介者が施術にも請求にも関与しない構造は妥当ですが、紹介者に故意・重大な過失がある場合まで免責する部分は、効力が否定されるおそれがあります
算定資料と患者の健康情報
資料に患者の健康情報が含まれるため、目的を限定した受け取り方を書面で決めておく必要があります
この契約で最も慎重に確かめたいのは、報酬の算定基準と、紹介の位置づけです。算定基準を「施術金額の一定の割合」とすれば金額は明確になりますが、前の節のとおり、厚生労働省の留意事項通知は、施術所が患者の紹介の対価として金品(いわゆる紹介料その他の経済上の利益)を提供し、その結果なされた施術を療養費の支給の対象外としています(別添1・別添2の通則3)。通知が挙げる相手方は、集合住宅・施設・請求代行の事業者、医療機関、医師などで、「等」と書かれています。紹介する事業者の報酬が、この「紹介料その他の経済上の利益」に当たるか、施術所の療養費の取扱いにどう影響するかは、通知の文言と運用に照らして確かめる必要があり、事務所が一律に断定するものではありません。確かなのは、報酬を何に対して払うのか(患者の紹介なのか、連絡・調整・書類の確認といった事務の支援なのか)を、実態に合わせて契約書に書くことと、受領委任を取り扱っている施術所との契約を結ぶ前に、その確認を済ませておくことです。
患者の健康情報の受け取りは、個人情報保護法の問題でもあります。病歴は要配慮個人情報で、取得には原則として本人の同意が必要です(法2条3項、20条2項)。施術所から紹介事業者に患者の個人データを渡すことは、原則として本人の同意が要る第三者提供に当たり(法27条1項)、委託に伴う提供など法27条5項が定める場合は例外となります。報酬の確認のために必要なのが件数や金額の集計だけなら、個人が特定できる資料は受け取らないという設計が、最も安全です。紹介料の向きによる整理は集患・成果報酬の契約でも紹介しています。
ヒヤリングで確かめること 鍼灸院・接骨院の契約書を作る・見直す前に
コースの目的は、体型・体重の変化をうたっていますか。痛みや不調の緩和が中心ですか。
特定継続的役務提供(エステティック)に当たるかの最初の分かれ目です。広告・ホームページ・カウンセリングの説明も含めて見ます。
コース名・メニュー名に「治療」「再生」など医療を思わせる言葉を使っていますか。ホームページやSNSにも出ますか。
あはき法7条・柔道整復師法24条の広告の制限と、契約書面の特定の両方に関わります。
保険の施術と自費のコースを、同じ患者に同じ日に提供することがありますか。
一部負担金の扱い、施術録の区別、領収の記録をどう分けるかを決めるためです。
外部の事業者から患者の紹介を受けていますか。紹介の対価を払っていますか。
留意事項通知の紹介料に関する定めとの関係と、報酬の定め方を確かめる出発点です。
紹介・支援の事業者に、患者の個人データを渡しますか。集計だけで足りますか。
渡すなら、目的の限定・同意・安全管理を契約書の条にします。
起きがちなこと
よくあるご質問
鍼灸院の美容鍼やダイエットのコースは、特定継続的役務提供に当たりますか。
一律には言えません。令別表第四の一の項(エステティック)は、人の皮膚を美化し、体型を整え、または体重を減ずるための施術を、施術者の資格で区切らずに定めています。美容や痩身を目的にうたって、1か月を超えて提供し、5万円を超える契約なら、文言上は当たり得ます。目的は、書面の題名だけでなく、広告・ホームページ・カウンセリングでの説明から判断される点に注意が必要です。
コース名に「治療鍼」のような言葉を使ってよいですか。
契約書面では、その名称が指す施術の内容・回数・方法を特定する必要があります。ホームページやSNSで使う場合は、あはき法7条(柔道整復の施術所は柔道整復師法24条)の広告の制限に触れないか、確認が必要です。施術方法や技能に及ぶ表示は、広告できる事項の範囲を超えるおそれがあります。
「個人差があり、効果を保証しません」と書けば、痩せなかったときの返金請求を防げますか。
それだけでは足りません。体重・体型・疾病の改善などを保証しないこと、医療契約ではないこと、結果は食事や生活習慣などで異なることを目的の条に具体的に書き、勧誘のときの説明やホームページの表現も合わせる必要があります。特定継続的役務提供では、効果について事実と異なることを告げる行為が禁止されています(特定商取引法44条1項1号)。
保険の施術を受けている患者に、自費のコースを提案してもよいですか。
提案すること自体を禁じる規定はありませんが、保険の施術と自費のコースを分けて書面を作り、一部負担金を減免しないこと、受領委任に係る施術録を区別して整理することなどに注意します。保険の対象外であることと、中途解約の精算方法を、説明のうえで書面に残します。
訪問鍼灸の施術所に患者を紹介して報酬をもらう契約で、気をつけることは何ですか。
対象の患者の定義(医師の同意書の取得済みなど)、報酬の算定の基準、紹介者が施術と請求に関与しないこと、資料の範囲と患者情報の取扱いを書面にします。厚生労働省の留意事項通知には、施術所が紹介料その他の経済上の利益を提供して患者の紹介を受けた場合、その施術を療養費の対象外とする定めがあるため、報酬の性質と通知との関係を、最新の通知で契約の前に確かめます。
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本ページは一般的な情報提供です。医療機関の開設・介護保険の指定などの許認可の手続、診療報酬の請求、労務の手続は扱っていません。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたクリニックのウェブサイトの利用規約・プライバシーポリシー、訪問看護・自費リハビリ・生活支援の利用契約書、医療機関との業務提携契約書、介護事業の譲渡契約書、歯科医院の契約書などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で、医療広告の記述は厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 医療法における病院等の広告規制について(厚生労働省) / 個人情報保護委員会