このページの要点
- 契約の成立の時点は商品ごとに一つに決め、規約・特定商取引法に基づく表記・申込書・画面の説明をそろえる。月額コースに別の契約書は要らない。
- 無料相談の場では、有料プランの勧誘も申込みの受付もしない(特定商取引法2条3項)。聞かれたら料金表の所在と一般的な内容を案内するにとどめる。
- 特定継続的役務提供は、政令の七つの役務への当てはめから始める(施行令別表第四)。発達や保護者の相談は該当せず、学習指導の色が強いときだけ期間と金額(5万円超)を見る。
- 障害児通所支援(児童福祉法6条の2の2)ではないことを、規約・表記・申込画面・申込書に同じ内容で示し、「個別支援計画」の語を避ける。
結論:商品ごとに契約の入口を決め、規約・フォーム・表示を同じ内容にそろえる
発達に特性のある子どもと保護者を支える相談、ことばや読み書きの相談を、オンラインで、公的な保険や福祉の制度の外で行うサービスは、商品が一つで済むことが少なくなります。単発の相談、数回をまとめたパッケージ、毎月自動で更新される月額コースが並び、入口には無料相談があります。書類も、利用規約、プライバシーポリシー、特定商取引法に基づく表記、申込みのフォーム、問診のフォームと複数になります。事務所がこの種のサービスの書類を整えてきた中で、書類の中身より前に決めておくべきだと考えた判断は、次の五つです。
- 商品ごとに、契約がどの時点で成立するかを一つに決め、すべての書類で同じ書き方にする。月額コースのために別の契約書を用意する必要はない。
- 無料相談の場では、有料のプランの勧誘も申込みの受付もしない。ビデオ通話であっても、電話勧誘販売に当たり得るものとして安全側に設計する。
- ホームページに載せる簡易版と規約の全文について、食い違ったときにどちらを優先するかを一文で決めておく。
- 特定継続的役務提供に当たるかどうかは、政令で定められた七つの役務への当てはめから始め、そのうえで期間と金額を見る。障害児通所支援(児童発達支援など)ではないことは、表示で明確にする。
- 同意の取り方、記録の残し方、新しい外部ツールを入れるときの手続を、運用が始まる前に決めておく。
このページは、申込みに至る入口の設計を扱います。「医療行為ではない」ことの線引きは「医療行為ではない」の線引き、園・学校・医療機関との情報連携の同意は患者情報・利用者情報の提供同意書、パッケージの途中解約の返金の計算はキャンセル料と返金、子どもの利用と親権者・後見人の確認は訪問看護・自費サービスの契約書で詳しく扱っています。
商品構成と契約の成立:単発・パッケージ・月額を一つの規約で束ねる
事務所が書類を整えた二つの案件を材料にします。一つは、保護者向けの相談、子どもへの個別のオンライン支援、家庭で撮影した動画の分析と面談を単発で提供し、これらを組み合わせた月額コースを三つ置いた発達支援の伴走サービスです。もう一つは、資格を持つ個人が運営する、幼い子どものことばや読み書きについて保護者の相談を受けるサービスで、単発の相談、三か月のパッケージ、過去の利用者に限った追加の相談があります。どちらも、予約や決済は外部の予約管理システムで受け、連絡はメッセージアプリの公式アカウントで行う、小規模な事業者の典型的な運用です。
月額コースに別の契約書は要らない
月額コースの申込みでは、「契約書に署名してもらわなくてよいのか」という質問が出ます。事務所の回答は、不要です。契約は申込みと承諾で成立し、書面の作成などの方式は法令に特別の定めがない限り要りません(民法522条1項・2項)。登録の画面で規約とプライバシーポリシーに同意して申込みを完了し、登録が完了した旨の通知が申込者に届いた時に成立する、と規約に書けば足ります。要るのは契約書ではなく、同意欄、申込みの最終確認画面の表示、承諾の通知という三つの仕掛けです。インターネット上の申込みの画面は通信販売に当たり、申込みの最終確認の画面には、役務の分量、対価、支払の時期と方法、提供時期、申込みの撤回や解除に関する事項を表示しなければなりません(特定商取引法12条の6第1項)。また、役務の対価を前払いで受けるときは、申込みを承諾する旨又は承諾しない旨などの通知が要ります。ただし、対価を受領した後遅滞なく役務を提供したときは不要です(同法13条1項)。月額コースでは、毎月の決済のたびにこの通知が必要になる場合があるため、規約に「決済のつど、受領した金額と日付、対象の契約期間を通知する」と書き、通知を電子メールで受けることへの同意も申込みの際に取っておく設計にします。
成立の時点は一つに決める
契約の成立の時点は、商品によって違ってかまいませんが、同じ商品については、規約・特定商取引法に基づく表記・申込書・画面の説明が同じことを言っていなければなりません。書類が複数あると、申込書兼契約書の本文だけが「承諾の通知が申込者に到達した時に成立する」と書かれ、規約・表記・申込書の冒頭の説明は「利用料金の入金を確認した時に成立する」としている、という食い違いが起こりがちです。この場合は、すべての書類を「入金を確認した時」に統一します。成立の時点は、返金や取消しの起点にもなるため、一か所のずれが紛争の争点になります。
事務所の書類での扱い 契約成立の時点
申込書と規約・表記の書き方
成立の時点は取消し・返金・提供開始の起点になるため、書類間で一つに定める。
月額コースは入口が二つになる
月額コースの申込みを、「今月から開始」と「来月から開始」の二つの入口に分けた案件では、条文も二つに分けました。「今月から開始」は、決済付きの申込フォームで初月の料金を支払い、そのあとにメンバー登録をする流れです。「来月から開始」は、メンバー登録の画面でカード情報を登録するだけで申込みが完了し、料金は翌月の1日に決済されます。入口が違えば、契約が成立する通知の種類(決済完了の通知か、登録完了の通知か)、料金の支払の時期、申込みを取りやめるときの扱いが変わります。たとえば、「今月から開始」で初月の料金を払ったあと、決められた期限までにメンバー登録をしなかった場合は、月額コースを終了し、初月の料金を取消料も返金の手数料も引かずに全額返金する、と定めました。申込みの途中で止まった場合の扱いは、画面の設計から生じる事態なので、規約に先回りして書いておくべき事項です。
| 商品 | 入口 | 成立の時点 | 支払の時期 | 休む・やめるときの考え方 |
|---|---|---|---|---|
| 無料相談 | 予約システムの申込画面(同意欄つき) | 予約完了の通知が届いた時 | なし(お一人1回限り) | 無断で参加しなかった人の再度の申込みは断ることがある |
| 単発の相談・個別支援 | 予約システムで日時を選び、カード決済を完了 | 予約完了の通知が届いた時 | 申込みの手続の時 | 前日までの連絡は無料。当日以降は割合を定める |
| パッケージ(3か月など) | 商品別の申込書兼契約書 | 入金を確認した時 | 入金(決済)の時 | 未実施の分と未経過の分から、実費を引いて返す |
| 月額コース | 決済つきの申込フォーム、またはメンバー登録 | 決済完了又は登録完了の通知が届いた時 | 毎月1日(初月は入口による) | 定額制のため休んでも減額しない。解約は次の更新日の前日まで。即時の解約も可能 |
返金の計算式は案件ごとに設計します。パッケージと月額の精算の考え方はキャンセル料と返金に書いています。
用語は一つの意味にそろえる
商品構成を変更するときは、用語のずれにも注意が要ります。ことばの相談の案件では、「初回相談」という言葉が、単発の商品名と、三か月のパッケージに含まれる最初の相談という二つの意味で使われていました。規約では「初回相談」を独立した商品名として使わず、「単発個別相談」と、「三か月サポートに含まれる初回のオンライン相談」に呼び分けました。また、過去の利用者に限って提供する追加の相談は、利用できる人の範囲を規約に明記し、パッケージの利用中に追加する場合は独立した別の契約として扱うことを書きました。
申込みのフォームを分けてよいか
商品別に申込みのフォームを分けることは適法です。通信販売の表示義務は、個々の申込みの場面に付随するからです。ただし、分けたフォームは、どれも独立の契約書として機能させなければなりません。事務所は、各フォームが次の四つを備えているかを確認します。
商品別の申込フォームが、契約書として機能するための点検
- 申込者と対象となる子どもの情報を、その商品に必要な範囲で入力する欄がある。
- 規約・プライバシーポリシー・特定商取引法に基づく表記を確認したうえで同意する、チェックの欄がある。
- 支払の案内と、入金(又は決済)の確認によって契約が成立することの説明がある。
- 申込内容の最終確認の表示(役務の分量、対価、支払の時期と方法、提供時期、取消し・解約の条件)がある。
- 契約の成立を知らせる通知(電子メールなど)の内容と送り方が決まっている。
申込みのフォームと規約・簡易版の関係
申込みの画面は短く、規約は長くなります。ホームページには要点をまとめた簡易版を置き、全文は別のページに置きたい、という相談は多くあります。これは適法です。規約は、あらかじめ契約の内容とする旨を相手方に表示しておけば、定型約款として契約の内容になります(民法548条の2第1項)。相手方から請求があれば、約款の内容を示す義務もあります(同法548条の3第1項)。ことばの相談の案件では、簡易版を申込書やホームページに置く方針を確認したうえで、次の三つを加えました。
- 簡易版と全文が食い違った場合にどちらを優先するかの一文。
- 支払の前であれば、申込みを無料で取りやめられることの記載。
- 「法令により返金すべき場合を除く」という留保。
特定商取引法に基づく表記は、簡易化せず全文のページに置き続けます。表記は、通信販売の広告の表示義務(同法11条)に基づくものだからです。
料金の表示、規約、個別の案内の優先順位
書類が複数あると、同じ事項について書類ごとに表現が違ってしまいます。発達支援の案件では、規約の第3条に、優先順位を次のように定めました。料金の額については、申込画面に表示された額、料金表の額の順に優先します。料金の額以外の事項(取消料や返金の額を含みます)については、料金表やホームページの記載と規約が違うときは規約を優先します。ただし、法令上、異なる扱いが必要な場合は法令に従います。また、公式アカウントやメールで事業者が個別に行う案内は、規約を補足するものとし、規約を変更するものではありません。ただし、案内の内容が規約より利用者に有利であるときは、案内の内容によります。担当者が個別に「今回は特別に」と案内した内容と規約が食い違う場面は、小規模な事業ほど頻繁に起こります。優先順位を決めておくと、担当者の言葉が思わぬ約束になることを防げます。
問診のフォームに移す項目と、申込書に残す項目
申込書を簡素にして入力の負担を減らしたい、という要望もよくあります。ことばの相談の案件では、申込書から、住所、対象の子どもの生年月日・年齢・学年、現在困っていること、の三つを外し、問診のフォームに移す案を検討しました。住所を申込書から外してよいかという質問には、「外してよい」と答えています。住所は契約の成立の要件ではなく(民法522条は、契約の成立に方式を要しないとします)、住所がないことで困るのは、内容証明郵便や訴訟の書類を送る宛先がなくなる場面に限られます。電話番号は残します。運用上、郵送物や本人の確認が必要になる事業者は、住所欄を残す選択もあり、どちらにするかは、紛争になったときの連絡先の確保をどう考えるかの判断です。
一方で、移してはならない項目もあります。それは、要配慮個人情報の取得に対する同意です。要配慮個人情報を取得するには、あらかじめ本人の同意が要ります(個人情報保護法20条2項)。子どもの発達や健康に関する情報は、問診のフォームだけでなく、メッセージアプリのやり取り、相談中の会話、提出された写真や動画からも入ってきます。同意を問診のフォームだけで取ると、問診より前の会話で入った情報について、同意の穴ができます。申込書の段階で包括的な同意を取っておけば、その後のどの経路で入ってくる情報も、あらかじめの同意の対象になります。問診のフォームには、同意を取り直すのではなく、「要配慮個人情報に当たること」「プライバシーポリシーに従って扱うこと」「申込みの際に同意済みであること」「答えたくない項目は空欄でよいこと」を知らせる確認の文を置きます。同意のチェックを二重に取ると、利用者にとっても負担になるだけです。
ヒヤリングで確かめること 申込みの入口を設計する前に
商品はいくつで、それぞれ、いつ、どこで申し込まれますか。
申込みの場所ごとに、成立の時点、支払の時期、最終確認の表示が変わるため。
契約が成立する通知は、誰が、何で送りますか。予約システムの自動通知ですか、事業者からの手動のメールですか。
承諾の通知に記載する事項と、電子メールで通知することの同意の取り方を決めるため。
申込書で聞く項目と、問診のフォームで聞く項目は、どう分けますか。
要配慮個人情報の同意を、どの経路で入る情報にも及ぶように取るため。
ホームページに載せるのは全文ですか、簡易版ですか。
簡易版を使う場合の優先関係の一文と、特定商取引法に基づく表記の置き場所を決めるため。
無料相談から申込みへ:電話勧誘販売に当たらない導線
発達の相談や学習の相談を扱うサービスでは、無料のオンライン面談から有料のプランに進む流れが、自然な導線として作られがちです。ここに、電話勧誘販売の問題があります。電話勧誘販売とは、事業者が電話をかけ(又は政令で定める方法で相手に電話をかけさせ)、その電話において契約の締結について勧誘を行い、その相手方から申込みを郵便等で受ける取引をいいます(特定商取引法2条3項)。この「郵便等」には、通信機器や情報処理の機器を利用する方法が含まれており(同法施行規則2条)、ウェブ上の申込みも入ります。政令は、電話をかけさせる方法として、勧誘が目的であることを告げずに電話をかけるよう要請すること、他の者より著しく有利な条件で契約できると告げて電話をかけるよう要請すること、を挙げています(同法施行令2条)。
電話勧誘販売に当たると、勧誘の前に事業者名と勧誘の目的を告げること(同法16条)、契約を締結しない旨を示した人に再び勧誘しないこと(同法17条)、申込みの内容を記載した書面や契約の内容を明らかにする書面を交付すること(同法18条・19条)が必要になります。さらに、書面を受け取った日から8日以内は、書面又は電磁的記録で申込みの撤回や契約の解除ができ(同法24条1項)、その場合は、役務がすでに提供されていても、事業者は対価を請求できず(同条5項)、損害賠償や違約金も請求できません(同条3項)。ウェブ上で自分から申し込む通信販売には、法定のクーリング・オフがないのと対照的です。
ビデオ通話が条文の「電話」に当たるかどうかは、一律に言い切れるものではなく、通話の方法や勧誘の態様を踏まえた個別の判断になります。ビデオ通話は画像を伴うものの、音声で勧誘が行われます。事務所は、音声でやり取りする面談の中で勧誘して申込みを受けると電話勧誘販売に当たり得るものとして扱い、当たらなくても困らない設計にしています。
事務所の書類での扱い 無料相談の位置づけ
無料相談の説明
相談中の勧誘と申込みの受付が電話勧誘販売に当たるのを避けるため。
相談後の案内
個別の勧誘ではなく、全員に同じ文面の案内であることを示すため。
- 無料相談は、申込者から対象児の様子及び悩みを聴取し、課題を整理することを目的とするものです。当方は、無料相談の予約画面に、申込者から求められた場合には単発サービス及び月額コースの内容及び料金を説明することがある旨を表示します。
- 当方は、無料相談の場において、単発サービス又は月額コースの契約の締結を勧誘することはなく、申込者から質問があった場合も、料金表の所在及び一般的な内容を案内するにとどめ、特定のサービス又はコースを推奨し、又はその利用を勧めることはせず、単発サービス又は月額コースの申込みを受け付けません。
- 前項の定めは、単発サービス及び月額コースのセッション並びに当方が利用者に電話をかける場合についても、同様とします。
無料相談の予約画面の表示、相談の場での対応、相談後の案内の三つが、同じ方針で動いていることを条項で確かめられる形にします。
無料相談の場での対応
観点
してよい対応
避ける対応
料金を聞かれたとき
聞かれた範囲で、料金ページに載っている内容のとおり説明する
聞かれていないのに、プランの説明を始める
申込みのリンク
求められたときに、予約ページのリンクを送る
相談の流れの中で、申込みのリンクや注文フォームのURLを通話中に送る
プランの推奨
全員に共通する一般的な情報として、内容を案内する
特定のプランを勧める。「今月中がお得」「枠が埋まりそう」と急がせる
相談後の連絡
全員に同じ文面で、サービスの内容と申込みの方法を案内する
個別に電話をかけ直して、申込みを促す
事務所が事業者に伝えている運用の例です。相談員が変わっても同じ運用になるよう、予約画面の表示と社内の手順書にも同じ内容を書きます。
ここまで厳しく設計する理由は、無料相談の中でプランを勧めるほうが売上が伸びる場合でも、勧誘と申込みの受付を分けておけば、電話勧誘販売の規制の対象になる場面を避けやすくなるからです。何を優先するかは事業者の判断で、勧誘する運用にするなら、電話勧誘販売の書面を交付し、クーリング・オフに対応する体制を整えます。
特定継続的役務提供・障害児通所支援に当たらない整理
特定継続的役務提供:七つの役務への当てはめから始める
特定継続的役務提供とは、国民の日常生活に係る取引で継続的に提供される役務のうち、身体の美化や知識・技能の向上など心身又は身上に関する目的の実現をもって誘引が行われ、その目的が実現するかどうかが確実でないものとして政令で定めるものを、政令で定める期間を超えて提供することを約し、政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約をいいます(特定商取引法41条1項・2項)。該当する場合は、概要書面と契約書面の交付、クーリング・オフ、中途解約の損害額の上限などの規制がかかります。
判断は、役務の種類から始めます。政令で指定されている役務は、限定的に列挙された七つです(同法施行令別表第四)。エステティック、美容医療、語学の教授、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手の紹介です。「発達の相談」「保護者の伴走」「ことばの相談」は、七つのどれにも当たりません。ここで該当しないと判断できれば、期間や金額を検討する必要はありません。
ことばや読み書きの相談では、学習の指導の色が濃くなる場合に注意が要ります。家庭教師や学習塾の類型は、学校教育法に定める学校(幼稚園と大学を除く)における教育の補習のための学力の教授などを対象にします(別表第四の四・五)。小学生向けの読み書きの指導が、この類型に近づく余地は否定できません。このとき、対象年齢が低いことを根拠に非該当と判断してはいけません。補習の類型は、幼稚園と大学を除く学校の児童・生徒を対象にしています。事務所は、家庭向けの関わり方や練習方法を提案する相談として表現をそろえ、そのうえで、期間と金額を確認しました。
期間と金額は、類型ごとに政令で決まっています。語学教室・学習塾・家庭教師・パソコン教室・結婚相手紹介の期間は2か月を超えること(別表第四)、金額は5万円を超えること(同法施行令24条2項)です。三か月のパッケージは、期間の要件を超えますが、総額が金額の基準以下に収まる設計であれば、該当しません。値上げやコースの追加によって総額が5万円を超える場合は、あらためて検討が要ります。月額コースは最低の利用期間を置かず、いつでも解約できる設計としています。料金は、税込か税別かを明記して表示します。
障害児通所支援(児童発達支援など)ではないこと
児童福祉法は、障害児通所支援を、児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援と定めます(6条の2の2第1項)。これらは、都道府県知事が指定する事業者(指定障害児通所支援事業者。21条の5の3第1項)が行い、保護者が市町村の通所給付決定を受け(21条の5の5)、通所受給者証の交付を受けて利用します(21条の5の7)。民間の自費のオンライン支援は、この制度とは別のものです。誤解を避けるため、事務所は次の表示を、規約、特定商取引法に基づく表記の「サービスの性質」の欄、申込みの画面、申込書の冒頭の四か所に、同じ内容で置きます。
- 利用者の費用負担による民間のサービスであり、児童発達支援、放課後等デイサービスその他の障害児通所支援や公的な給付に基づくサービスではなく、これらに代わるものでもないこと。
- 通所受給者証に基づく給付や、健康保険証による保険診療は利用できないこと。
- 診断書、紹介状、学校に提出する意見書や証明書は作成しないこと。
- 支援の計画は、事業者独自の書式による「支援プラン」であって、制度上の「個別支援計画」ではないこと。
最後の「個別支援計画」は、障害児通所支援で使われる制度上の言葉です。民間のサービスでは、「支援計画書」「カルテ」といった言葉をやめ、「支援プラン」「相談記録」のように独自の呼び方にそろえました。サービスの名称や広告の言葉が、制度のサービスと見間違えられないようにするためです。
同意・記録・外部ツール:フォームを契約の証拠として使う
要配慮個人情報として扱う範囲と、同意の時期
要配慮個人情報とは、病歴その他、本人に対する不当な差別や偏見が生じないように取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等を含む個人情報です(個人情報保護法2条3項)。政令は、精神障害(発達障害を含みます)があること、医師等が行った健康診断その他の検査の結果、医師等から心身の状態の改善のための指導や診療を受けたことを挙げています(同法施行令2条1号〜3号)。診断を受けていない「グレーゾーン」の子どもの特性の情報は、それだけでは要配慮個人情報に当たらないことがありますが、検査の結果や医師の指導を受けた事実が混ざる場面が多く、事務所は、診断の有無にかかわらず、発達の状況に関する情報の全体を要配慮個人情報と同じ水準で扱う方針をプライバシーポリシーに書きます。
同意を取る時期は、有料の契約を結ぶ前の無料相談の申込みの時点です。無料相談の予約フォーム、月額コースの申込フォーム、メンバー登録の画面、問合せのフォームのすべてに、同じ内容の同意欄を置き、チェックのない申込みは受け付けません。無料相談の段階から子どもの様子が語られるため、有料の契約の締結を待っていては、同意の前に情報が入ってしまいます。
事務所の書類での扱い フォームの同意の文言
同意の取り方
チェック欄があれば、みなしの文言は不要。同意の対象が分かる文にしたほうが、同意の有効性を説明しやすい。
外国にある事業者のサービスに個人データを取り扱わせるときは、個人データの外国にある第三者への提供に当たる場合があります。その場合は、同条1項に定める例外に当たるときを除き、あらかじめ本人の同意を得るとともに、その国の個人情報の保護に関する制度などの参考情報を提供する必要があります(個人情報保護法28条1項・2項)。同意の文の中に、外部サービスへの提供を書いておく理由です。
事例の紹介と、新しいAIツールを入れるとき
支援の事例をホームページやSNSで紹介したい、という要望には、同意を取る時期に決まりはない、と回答しました。ただし、同意は包括的な規約の同意ではなく、掲載する文章、掲載する媒体、子どもを特定されないようにする方法を見せたうえで、個別のフォームで取ります。規約の設計では、子どもが16歳以上の場合は、保護者の同意に加えて本人の同意も取ります。
「新しいAIツールを使うたびに規約を改定する必要があるか」という質問には、個人情報を入力しない使い方であれば不要で、扱う場合は規約の外部ツールの一覧に追加し、あらかじめ周知する、と回答しました。規約の変更は、変更の効力発生時期を定め、変更する旨と変更後の内容、効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法で周知することが要件です(民法548条の4第2項)。外国の事業者のツールの場合は、さきほどの28条の同意を取り直す必要が出ることがあります。録画や文字起こしにAIを使う場合は、原則として全回を録画するとしたうえで、予約の際の選択又は面談の開始時の申出で録画を断れること、断っても料金は変わらないこと、AIが入力された内容を学習に使わない契約・設定で使うこと、氏名を伏せた相談内容であっても規約の一覧にないAIには入力しないこと、を規約とプライバシーポリシーに書きます。
家族に手伝ってもらう場合
個人で運営する事業者が、家族に連絡や資料の送付、予約の管理を手伝ってもらうことがあります。事務所は、規約に「セッションを担当せず、事務だけを補助する者」を置くことを書き、必要な範囲で子どもの情報を取り扱わせること、秘密保持の義務を課すことを定めます。プライバシーポリシーでは、個人データの取扱いの委託先ではなく、事業者の指揮監督の下で事務を行う従業者として監督する、と書きます。実務では、秘密保持の誓約書を取り、共有フォルダや予約システムの権限を必要な範囲に限ります。
ヒヤリングで確かめること 同意と記録を設計する前に
無料相談の申込みの時点で、子どもの様子や診断の有無は書かれますか。
同意を取る時期を、有料の契約の前に置く必要があるかを判断するため。
ビデオ通話や保存に使う外部サービスは何ですか。海外の事業者ですか。
外国にある第三者への提供の同意と、規約の外部ツールの一覧を決めるため。
録画や文字起こしにAIを使いますか。
録画を断れる手続と、AIに入力してよい情報の範囲を決めるため。
家族や外部の人が、予約や連絡を手伝いますか。
事務補助者の位置づけと、秘密保持の誓約書の要否を決めるため。
申込みを断る場合と、待ってもらう場合
入口の設計には、申込みを受けない場面の設計も含まれます。発達支援の案件では、規約に、申込みを承諾しない事由を限定して並べました。申込者が資格(子どもの親権者であること)を満たさない場合、申込みの内容に虚偽や記載の漏れがある場合、過去に規約に違反した場合、子どもの状態から、このサービスよりも医療機関の診断や治療を優先すべきだと合理的に判断した場合、月額コースの受付の人数を超えるなど事業者の業務に支障がある場合、などです。承諾しない場合は、承諾しない旨と、受け取った料金をすぐに返す旨、その方法を申込者に通知し、全額を返金する手続をします。契約が成立した後であっても、最初のセッションの前に判明した場合は、同じ手続で解除できます。
人数に限りのあるコースでは、受付を止めて空き待ちの案内をする場合があります。規約には、空き待ちの案内は契約の成立を意味せず、空き待ちに料金は生じないこと、受付を再開するときは申出を受けた順に案内するよう努めることを書きます。申込みを受けるかどうかを事業者が選べる、という整理が崩れると、「空き待ちの人に対する約束」が生じたと主張される余地が残ります。
申込みから契約の成立までの流れの例(単発のサービス)
- 予約フォーム日時を選び、同意欄にチェックを入れる。カード決済を完了する。
- 最終確認分量・対価・支払・提供時期・取消し条件の表示を確認して申し込む。
- 予約完了の通知通知が申込者に届いた時に契約が成立する。
- セッション前日までの連絡は無料で変更や取消しができる。
月額コースや、銀行振込のパッケージでは、決済の通知・入金の確認が成立の時点になります。
起きがちなこと
入口の書類は、運用が始まってから直すと、すでに結んだ契約との関係が問題になります。商品の数、申込みの経路、決済の方法が固まった段階で、全書類を同時に確認することが、最も手間のかからない進め方です。
よくあるご質問
月額コースにも、別に契約書を作って署名してもらう必要がありますか?
必要ありません。契約は申込みと承諾で成立し、書面の作成などの方式を要しないのが原則です(民法522条2項)。登録の画面で規約とプライバシーポリシーに同意して申込みを完了し、登録完了の通知が届いた時に成立する、と規約に書けば足ります。そのうえで、最終確認画面の表示、承諾の通知、電子メールでの通知への同意の取得を整えます。
無料相談の最中に、料金を聞かれました。答えてもよいですか?
聞かれた範囲で、料金ページに載っているとおりに説明することや、求められて予約ページのリンクを送ることは問題ありません。避けるのは、特定のプランを勧めること、「今月中がお得」などと急がせること、聞かれていないのに説明を始めること、相談の流れの中で申込みのリンクを送ることです。ビデオ通話でも、電話勧誘販売に当たり得るものとして扱います。
ホームページには簡易版だけを載せ、規約の全文は別のページに置いてもよいですか?
適法です(民法548条の2・548条の3)。簡易版と全文が食い違ったときに優先する側を一文で決め、支払の前なら無料で取りやめられることと、法令により返金すべき場合を除くという留保を加えます。特定商取引法に基づく表記は、全文のページに置き続けます。
3か月のパッケージは、特定継続的役務提供になりますか?
まず、扱う役務が政令の七つ(エステ、美容医療、語学、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介)に当たるかを見ます。発達や保護者の相談は当たりません。学習指導の色が強い場合は、期間(2か月超)と金額(5万円超、同法施行令24条2項)の両方を確認します。総額が基準以下であれば該当しませんが、値上げで超える場合は再検討が要ります。
新しい生成AIのツールを使うたびに、規約を改定する必要がありますか?
個人情報を入力しない使い方であれば、規約の改定は不要です。個人情報を扱うなら、規約の外部ツールの一覧に追加し、効力発生時期を定めて周知します(民法548条の4第2項)。外国の事業者のツールであれば、個人データの外国にある第三者への提供として、本人の同意を取り直す必要が出ることがあります(個人情報保護法28条)。
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